
夢を覚えていないのは、夢を見ていないから?朝の記憶を研究から考える
夢をよく覚えている人もいれば、何も思い出せない朝もあります。夢の体験と記憶はどう違うのでしょうか。204人の朝の報告を調べた研究から、覚えていないことの意味と、そこからは判断できないことを図で解説します。
IN THIS STORY
この記事で考えられること
- 朝に夢を覚えていないことだけで、眠っている間に夢がなかったとは決められない
- 内容を思い出せることと、夢を見た感じだけが残ることを分けて考える
- 夢の報告回数は、一般的な記憶力や睡眠のよさを測る点数ではない
目次
昨日の夢を楽しそうに話す人を見て、「自分は最近、夢を見ていないな」と思う。けれど、朝に思い出せないことだけで、眠っている間に夢がなかったとは決められません。 夢を見ることと、その内容を起きてから思い出せることは、分けて考える必要があります。[1]
では、夢を覚えていないという朝の感覚から、何がわかるのでしょうか。夢の内容を解き明かす前に、研究が「見た」と「覚えている」をどう扱っているかを見てみます。
「覚えていない」にも、二つの言い方がある
「何か夢を見ていた気がする。でも、場面が出てこない」。そんな朝と、「夢を見た感じも残っていない」という朝は、同じではありません。
2025年に発表されたElceらの研究では、目覚めた人の報告を次の3つに分けました。[1]
- 内容を覚えている:場所や人物など、何らかの内容を話せる。
- 見た感覚だけ残る:夢を見た感じはあるが、内容は思い出せない。
- 見た感覚もない:目覚めた本人が、夢を見なかったと感じている。
たとえば「知らない駅で電車を待っていた」は一つ目。「何か見ていたけれど、駅だったかどうかもわからない」は二つ目に近い例です。これらは区分を説明するために編集部が作った例で、研究参加者の発言ではありません。
二つ目は論文で「white dream」と呼ばれています。白い景色の夢という意味ではなく、内容を取り出せないのに、見たという感覚が残る状態です。三つ目も、本人の朝の報告を分類したものです。「その夜の脳では、一度も夢が生じなかった」と直接確かめた区分ではありません。
夢の体験は、そのまま朝の報告にはならない
朝に夢を話すには、睡眠中の体験が記憶に残り、目覚めてから思い出せる必要があります。さらに、思い出したもののどこを言葉にするか、という段階もあります。[1]

報告に残らなかったことを、体験そのものがなかった証拠にすることはできません。一方で、覚えていない人に「本当は必ず夢を見ていた」と言い切ることも、この朝の報告だけからはできません。
夢の研究方法を論じたWindtは、報告が体験のすべてを同じ細かさで説明するとは限らないと指摘しています。そのうえで、適切な条件で集めた報告は、睡眠中の体験を調べる手がかりになるという立場です。「記憶を通すなら全部あてにならない」と切り捨てるのではなく、いつ、どんな尋ね方で集めたかが重要になります。[2]
204人の朝を調べると、どんな違いがあった?
Elceらはイタリア語を母語とする18〜70歳の健康な成人217人を募集し、手順を満たした204人の報告を分析しました。参加者は約15日間、自宅で自然に目覚めたあと、直前に体験していたことを音声で記録しました。分析した朝の報告は計2900回です。[1]
参加者ごとに3区分の報告割合を求め、その割合を平均すると、次のようになりました。これは平均の内訳であり、個人差の大きさを示す図ではありません。

ここで14%だった「見た感覚だけ残る」を、すべて「夢を見なかった」にまとめると、朝の体験の違いを消してしまいます。また58%という値も、「人の58%だけが夢を見る」という意味ではありません。同じ人が、ある朝には内容を話せても、別の朝には何も思い出せないことがあります。
この研究で尋ねたのは、目覚める直前の最後の体験です。一晩の夢をすべて集めたわけではありません。夢も、筋の通った物語だけに限らず、睡眠中の主観的な体験を広く含めています。数字を読むときには、何をどう数えたかを一緒に見る必要があります。[1]
覚える人と覚えない人を、能力で分けない
同じ研究では、夢に関心を持ち、意味があると捉える傾向と、朝に夢を報告することの間に関連が見られました。ただし、関心を持つから覚えやすいのか、よく覚えるから関心が強まるのか、因果関係はまだ決まっていません。[1]
また、夢の内容を思い出せないことと、一般的な記憶力の弱さを同じものとする結果でもありません。この研究では、言葉や図形の記憶テストと、見た感覚だけが残る報告との関連は見いだされませんでした。だからといって、記憶力とまったく無関係だと証明されたわけでもありません。夢を話せる量だけで、記憶力や想像力の順位をつけることはできません。
研究者は、別の考えや出来事が注意をそらす「干渉」が、内容の思い出しやすさに関係する可能性も論じています。しかし、これは「朝にスマホを見ると夢を忘れる」と直接試した実験ではありません。特定の朝の習慣だけを原因と決めることはできません。[1]
さらに、規則的な睡眠などの条件で選ばれた参加者による探索的な研究です。数字をすべての人の基準にしたり、夢の記憶だけで自分の睡眠のよしあしを採点したりする使い方には向きません。
思い出せない朝も、そのまま残していい
気になるなら、朝の感覚を「場面が残った」「見た感じだけある」「どちらもない」と短く分けてみる方法があります。これは編集部の記録の提案で、夢を増やす訓練や睡眠改善の方法ではありません。
「知らない駅にいた。誰といたかは不明」のように、思い出せるところだけで終えて構いません。見た感覚だけなら、その一言で十分です。あとから浮かんだ解釈を、最初から覚えていた内容として足す必要はありません。
残してみたい場面があるときは、小さな夢ノートの使い方も参考にしてください。今朝の記憶が空白でも、そこから「自分は夢を見ない人だ」と決めなくてよいのです。
A QUESTION FOR YOU
自分に聞いてみるなら
今朝は「場面を覚えている」「見た感じだけ残る」「どちらもない」のどれに近いですか?
正解はなくても大丈夫。今の言葉で、ひとつだけ。出典・参考資料
- The individual determinants of morning dream recall ↗
Valentina Elce ほか / Communications Psychology / 確認日 2026-09-30
2025年2月18日公開。217人を募集し204人の2900報告を分析した探索的研究。報告3区分の定義と割合、夢への態度と報告の関連、因果関係や記憶能力への解釈の限界。最後の覚醒前の体験を調べたもので、一晩の夢の総数や個人の健康を判定する研究ではない。 - Reporting dream experience: Why (not) to be skeptical about dream reports ↗
Jennifer M. Windt / Frontiers in Human Neuroscience / 確認日 2026-09-30
2013年11月7日公開の方法論的論考。体験を報告する際の不完全さ、覚醒から報告までの時間や尋ね方などの条件、適切に集めた夢の報告を研究の根拠として扱う立場。新たな介入実験として紹介しない。
AIを用いて原稿作成を支援しています。編集・AI利用方針をご覧ください。お問い合わせ・訂正の受付状況は、こちらのページをご確認ください。

