
初対面のあと「嫌われたかも」。好意の予想がずれる「ライキングギャップ」とは
会話のあと、言い方や沈黙が気になる。「ライキングギャップ」の研究から、自分の予想と相手の評価の違い、自己批判との関係、日常で考えるときの限界を読み解きます。
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この記事で考えられること
- 会話のあと、自分が思うより相手から好かれていたという平均的な傾向が報告されている
- 好意を推定した回答と、相手本人の回答は別の情報。自己批判だけで結論を出さない
- 研究は特定の相手の好意を保証しない。明確な断りや距離を置きたい意思は尊重する
目次
初めて会った人との会話。帰り道に、話が途切れた瞬間や、うまく言えなかった一言ばかり思い出す。「退屈させたかな」「嫌われたかもしれない」。
そんなとき、自分の会話への反省と、相手が自分に抱いた印象は、分けて考えられます。会話後に相手からどれほど好かれたかを低く見積もる傾向は、「ライキングギャップ(liking gap)」と呼ばれています。[1]
ただし、あなたが誰からも好かれているという証明ではありません。研究が何と何を比べたのかを確かめると、この言葉を日常で使える範囲も見えてきます。
相手の評価と、自分の予想を別々に尋ねる
ライキングギャップを確かめるには、本人の予想だけでなく、会話相手の回答が必要です。Susan Sprecherが2021年にオンライン公開した研究では、米国の大学生142人、71組が、用意された質問に答え合う15分のSkype会話に参加しました。[2]
会話後の両側の回答がそろった比較では、「相手から好かれたと思う程度」の平均は4.75、相手本人が回答した好意の平均は5.42でした。どちらも1〜7の7段階です。単に「自信がない」と答えたのではなく、相手の回答と照らすと、自分の予想のほうが低かったのです。[2]

これは、特定の条件で得られた平均です。参加者は女性が多く、事前に相手との類似性について情報を与える操作もありました。恋愛感情を見抜く研究ではなく、相手の報告を心の中そのものとして測れたわけでもありません。日本の人間関係全般に同じ結果が当てはまるとも限らず、「好かれる確率が何%」という数字には置き換えられません。[2]
なぜ、自分にだけ厳しい印象を思い浮かべるのか
ライキングギャップの説明候補の一つは、自分への否定的な印象が浮かびやすいことです。Erica J. Boothbyらの2018年の研究では、会話後に、相手への印象をつくった場面と、相手が自分への印象をつくったと思う場面を挙げてもらいました。後者のほうが否定的で、その違いは好意の推定差と関連していました。[1]
たとえば自分には「あの話、もっと短くできた」という反省が残っていても、相手は別の場面を覚えているかもしれません。自分の頭の中に残る反省を、そのまま相手の採点表にしてしまうと、二つの視点が混ざります。
この例は研究を踏まえた編集部の説明です。研究は、否定的な考えだけがずれの原因だと確定したものではありません。相手が何を考えたかは、自分の反省からは直接わからない。その区別が、この結果から受け取れる手掛かりです。
職場の研究でも、「感じていること」と「確認できたこと」は違う
ライキングギャップは三人での会話やチームでも調べられています。Adam M. Mastroianniらの2021年の研究では、工学系の学生チームや働く人の調査で、相手から好かれているという感覚と、助けを求めやすいという回答などに関連がありました。[3]
ただし、チームの調査では、全メンバーから相互の回答を集められていません。「自分が相手を好きな程度」と「相手が自分を好きだと思う程度」の差は見られても、一人ひとりが実際にどれだけ好かれていたかは不明です。この制約は論文にも明記されています。[3]
したがって、「職場で助けを求められないのは思い込み」「好かれていると考えれば仕事がうまくいく」とは言えません。関連を調べた結果であって、そうした考え方の効果を証明した実験ではないからです。
「相手が黙った」と「嫌われた」を一つにしない
会話を振り返るなら、起きたことと、その意味についての予想を分ける方法があります。ここからは研究で効果が確認された手順ではなく、編集部の提案です。
たとえば、初めて会った人に休日の過ごし方を尋ねたあと、少し沈黙があったとします。確認できる出来事は「質問のあと、相手がすぐには答えなかった」。一方で「変な質問だと思われた」「私と話したくなかった」は、まだ相手に確かめていない解釈です。

答えを考えていた可能性も、あまり触れてほしくない話題だった可能性もあります。無理に明るい説明へ変える必要はありません。どの説明に決めるにも情報が足りない、と置いておけます。
その後に相手が自分から話題を広げたのか、別の話へ移ったのか。それを含めて振り返ると、一瞬の沈黙だけで会話全体を判定せずに済みます。表情や一言の意味を何度も解読し続けるための作業にはしないでください。
次の会話では、好かれたかよりも具体的な話題へ
次に話す機会があるなら、相手の気持ちの判定を求める代わりに、前の会話の内容へ戻ることもできます。「この前教えてくれた本、少し読んでみました」のように、実際にしたことを伝える。読んでいなければ、読んだことにしなくて大丈夫です。
これは好意を引き出す定型文ではありません。自分が覚えていた話題を相手に返す、小さな選択肢です。あらためて連絡する理由がなければ、今すぐ何か送る必要もありません。
また、相手が誘いを断った、話したくないと言った、連絡を控えてほしいと伝えた。そのような意思は尊重します。ライキングギャップを理由に、断りを「本当は好意がある」と読み替えることはできません。
会話が完璧でなかったことと、相手との関係がだめになったことは同じではありません。直したい話し方が一つ見つかったなら、次に試すことを一つ決める。まだわからない相手の気持ちは、わからないまま残しておいてもよいのです。
A QUESTION FOR YOU
自分に聞いてみるなら
今日の会話で気になったことは、実際に起きた出来事ですか。それとも、相手の気持ちについての予想ですか?
正解はなくても大丈夫。今の言葉で、ひとつだけ。出典・参考資料
- The Liking Gap in Conversations: Do People Like Us More Than We Think? ↗
Erica J. Boothbyほか/Psychological Science 29(11), 1742–1756(2018)、Yale研究室公開PDF / 確認日 2026-10-11
Study1a・1b・2の方法と結果。会話後の好意の推定差と、相手が自分に抱いたと思う印象の否定性との関連。 - The role of expectations for liking and other positive Affiliative outcomes in the get-acquainted process that occurs over Computer-mediated video communication ↗
Susan Sprecher/Current Psychology 42, 1044–1057(2021年オンライン公開、2023年巻号) / 確認日 2026-10-11
Method、The liking gap、Strengths and Limitations。142人71組、15分Skype会話、平均4.75と5.42、7段階の比較。相手の報告と予想を対応づけた分析。 - The liking gap in groups and teams ↗
Adam M. Mastroianniほか/Organizational Behavior and Human Decision Processes 162, 109–122(2021)、著者公開PDF / 確認日 2026-10-11
Study1〜3、特にp113のデータ構造の留保。三人会話、工学チーム、職場での結果と援助要請等との関連。Study2/3は全員の相互回答がなく、横断調査。
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